岩壁ポイントで一日粘ったけど、アタリは来なかった。下流からの風は弱いながらも吹き続けていて、流れも徐々に良くなっていったんだけど。夜、テントの真横で爆音ミュージックが鳴り響き、村人たちはウイスキーを煽りながら大騒ぎ。バンバ君も耳を両手で塞ぎながら顔をしかめている。ザイールから若い漁師が4人やってきていて、彼らに一晩かけて餌を集めてもらうことになった。
【2018.2.21】マイピリ滞在19日目 アタリゼロ
ザイールに送り込んだ使者たちは、僕のバッカンをパクって帰ってこなかった。余っていたザンダとショートノーズのンベッセで釣りに出たけど、ザイール側から真っ黒な雷雲がやってきて、すぐに大粒の雨が降り出した。
下流からやってくる雨に追いかけられながら、村へと急ぐ。道中、木造船で激流を漕ぎ上がろうとしているシャヴィーを見つけて、僕らの船に繋いで引っ張って帰った(彼は僕らの飲み水を買いに、わざわざザイールの大きな村までお使いに行ってくれていたのだ)。
村へ着いたころには土砂降りになった。何もできず、テントで眠って起きると15時前。雨は小降りになっていて、バンバは村の少年と小魚を釣りに出かけたという。夕方、カンバの小さいヤツを12、3匹と、デンキナマズを2匹釣って帰ってきた。
カンバの中から餌に使えそうなサイズを数匹選ぶ。バンバが言うには「マイピリ川とコンゴ川の合流点は、カンバの楽園だ!」うまくやれば、自分たちで餌調達も可能かもしれない。
【2018.2.22】マイピリ滞在20日目 ムベンガアタリ1
朝、アモコとシャヴィーがバッカンをザイールまで回収しに行ってくれた。「やつら、洗濯物入れに使ってやがった」・・・(笑)。今日は村にいても、下流からの風を感じることができる。期待を胸に、岩壁ポイントへ向けて出発した。アモコ指導の下、バンバが操船。彼は言語センスは凄いけど(独学で英語とスペイン語を習得)、絶望的に不器用。舵の取り方をなかなか覚えられない。
岩壁ポイントに来ると風はさらに強くなった。条件は整っている。それに、これまで風が強い日はいつも曇り空だったけど、今日は優しく日が差している。これは来るな、と予感がした。
11時頃、竿の隣でウトウトしていると、「ギャーーーー!!!」とクリックが鳴り響いた!竿に飛びついてアワセを入れるが、ドラグがズルズル滑って糸がどんどん引き出されていく。
止まらない魚にバンバとアモコは動揺しているが、「ここに留まるぞ!」と先手を打っておく。親指でスプールを押さえつけて耐えていると、魚が進行方向を変え、岸へ向かって泳ぎ出した。徐々に巻き取って、距離を縮めていく。
ドラグが締まらず(何かがイカれたみたいだ)、何度も引き出され、巻き取り、を繰り返しながら、背びれを出して浮上したのは110クラス。アモコの網捌きに冷や冷やしつつ、船べりでの攻防の末、何とか魚を誘導し、ネットに滑り込ませた!
「ケンゴ、チャンピョン!ケンゴ、チャンピョン!!」アモコとバンバが叫び、全力で抱き合って喜びを爆発させた!これまでアモコとは色々あったけど、ムベンガが釣れる度に全力のハグ。普段なかなかこんな顔、できないんだよな。
これまでのムベンガよりも面長(?)で、ワニのような顔つき。
イカれたドラグで戦ってみて、またひとつ見えたものがあった・・・ような気がする。
村へムベンガを持ち帰ると、村人たちは大喜び。2年前初めてこの村に来たときから、滞在スペースを作ってくれたり、調理器具を貸してくれたり、色々世話になってるおやっさんにも、初めて僕が釣ってきたムベンガを見せることができた。
子供たちはトランス状態で、喜びを爆発させている。これまで釣ってきた4匹のムベンガを村へ献上した結果(最初の一匹はアモコが一人占めした)、村人たちは僕のことを「チャンピョン・ケンゴ」と呼ぶようになった(笑)
村人たちへの配給を終えて、余った肉で定番のムベンガフリット・トマトソース煮。ちょっと飽きてきたけど、腹いっぱい食べた。
アモコが夜空を見上げて、「明日は雨だ」と言う。村滞在はあと3日。
【2018.2.23】マイピリ滞在21日目 アタリゼロ
アモコの予想通り、朝目を覚ますと大雨だ。僕らのボートが村の前の砂浜からきえていて、村人が勝手に持ち出して使っているという。昼過ぎにボートが帰ってきて釣りに出たけど、珍しく雨の後に風が吹かず、流れが完全に死んでいた。反応はなく、一日が終わる。
【2018.2.24】マイピリ滞在22日目 アタリゼロ
風がなく、とにかく暑く、流れも死んでいる。抑えている最下流~最上流のポイントを転々として頑張ったけど、アタリはなかった。何度流しても仕掛けが岸に寄せられてしまうので、発狂しそうになるが・・・最後まで抵抗することをやめない。明日が村滞在最後の日。
【2018.2.25】マイピリ滞在23日目 アタリゼロ
最終日、川へ出てみると、下流から風が吹き始めた!心地良い風に吹かれながら、岩壁ポイントで一日を過ごしたけど・・・ムベンガからのアタリは来なかった。
コンゴ川で過ごした最後の一日は、朝は曇っていたけど、お昼を過ぎるころには綺麗な青空が広がっていた。穏やかな天候の下、首都と川沿いの村を行き来するお船がよく走っている。長いことマイピリに滞在していると、僕はこの辺りじゃちょっとした有名人になっていて、船員から「ケンゴーーー!!」と大声で呼ばれ、手を振ったり。こんな日常風景も、今日でしばらく見納めだ。
肉を抜いて干してあった、この旅最大魚のお頭。持ち帰ろうと思っていたけど気が変わって、村で仲良くしていた少年、バクにあげることにした。
村での最後の食事は、ムベンガの餌で使ったムスワロのスープ。今にも雨が降り出しそうな中、超特急で調理して、貪るように食べる。大雨が降り出したところでテントにもぐりこんだ。
昨晩、この村最高齢(70才)のおじいさんが亡くなって、それからずっと村はお祭り騒ぎになっていた。特に、他の村からやってきている人たちは、じいさんが死んだのを口実に(これは僕の偏見じゃなく、バンバ君も同意見だった)、酒を飲んで歌って騒いでやり放題だ。雨はすぐに上がり、村人たちのお祭りは朝まで続いた。マイピリ村最後の夜は一睡もできず、村人たちの騒ぎが収まった翌朝5時頃、僕らはひっそりとマイピリ村を後にした。
【2018.2.26首都帰還~3.1帰国まで】
7時間コンゴ川を船でさかのぼり、マイピリ村からガベへ。そこからピックアップトラックの荷台に乗って、ガタガタ道を爆走10時間、やっと首都のブラザビルへ帰って来た。炎天下の移動で疲労困憊。冷たいコーラを一気に飲み干し、ハンバーガーを食べて涙が出そうになった。ホテルのベッドがフカフカで、悶絶しながら気絶した。
首都に滞在した2日間はバンバ君とずっと一緒に過ごした(なぜか、僕のホテルの部屋にずっといた笑)。中華料理を食べにいったり、夜の路上市を見に行ったり。
3月1日、バンバに見送られて出国ゲートをくぐる。僕もバンバも、涙がこぼれないようにこらえながら。たぶんお互い、バレバレだったな(笑)。振り返ってみて、長いようで短かった、なんて思えない。本当に果てしなく長かった旅が、終わっちゃったんだなぁ。
アフリカ縦断旅もしたい、アマゾンにも帰りたい。でも、まだだ。今回の旅はこれで終わったけど、僕のムベンガの旅は、まだ終われない。次のコンゴは今年の夏。飛ばせ、オレ。
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