2017年8月24日木曜日

オオカミウオに会いたくて 2012夏

 事の発端は、毎度ながら小塚拓矢さんの一言だった。

「道東エリア、青い二ホンザリガニとオオカミウオ、調査ヨロシク!」

「幸せの青いザリガニ」には、2010年の夏、出会うことができた。


おまけに、黄金ザリガニも。


修羅と化したヒロトさんと、石をひとつひとつひっくり返しては、ザリガニを摘み採るように捕まえて、渓流をひたすら歩いたことをよく覚えている。



 それから2年、オオカミウオについてサーチした。当時ネットには殆ど情報が出ておらず、地元の釣具屋を転々として生の声を聞こうとするも、「年に2、3本外道であがるかどうか」「幻の魚だよ」といった事しか聞けなかった。

釣具屋からは情報が得られず、次は道東エリアの遊漁船に片っ端から電話をかけていった。それでも良い話はなかなか聞けず、情報を得ることができない中、ある釣り船の船長だけ「釣れるど。あんなの釣ってどうすんだ?」と、確信を持った返事をくれた。


 2012年の8月末。ウチに一か月ほど居候していたセーヤさん、10日の休みをとって青森から釣りに来ていたケイタさん、オオカミウオのためだけに富山からやって来た小塚さん、自分を含め計4名で船をチャーター。誰もやったことがない未知の領域への挑戦。釣れるかどうかはやってみないとわからない。前日の夜はなかなか寝付けず、皆、ワクワクしていた。


出港し、30分ほどでポイントに到着。岸からそう離れていないのに水深は100m前後もある。「ニョロニョロ系の親玉、しかも根に着いている魚。それ相応のタックルを」と、自分はマグロタックルを用意してきた(後に、オーバースペック過ぎたことを実感。笑)。250号の胴付き仕掛けにイカを一本掛けにして、一気に沈める。常に小さなアタリが出続けて、アオゾイやシマゾイ、ウサギアイナメやタラ、ホッケ・・・とにかく色んな根魚が釣れ盛った。







皆、ジグに小さく切ったイカを付けて根魚を釣りまくっている中、イカ一本掛けを通していると、竿先がズーンと抑え込まれた。「なんだ?明らかにデカいぞ・・・!」重量感はあるが、殆ど抵抗することなく浮上してくる。ゆっくり、ゆっくり巻き上げ、魚体が見えた瞬間、皆で叫んだ。

「オオカミだーーー!!!」


船長が淡々とネットで掬い上げてくれて、「指持ってかれっから、気ぃつけろよ」と一言。クールな船長を尻目に、僕らはハイタッチして、全員で握手を交わした。


「船中で一本、誰に釣れても良い。なんとかその姿を見たい」そんな気持ちで挑んだオオカミウオ、この一匹がどれだけ嬉しかったか。皆、自分のことのように発狂して、祝福してくれた。が、これで終わりじゃなかった。むしろ、ハジマリだった。すぐに小塚さんに来た!


そして、それに続いて、セーヤさん、ケイタさんも。なんとこの日、船中でオオカミウオが20本近く釣れたのだった・・・!


 結局は、誰もやったことがなかっただけ。ただそれだけなんどろうけど、こんな未知の世界が残されていたことが心から嬉しかった。そこに着目した小塚さんはいつものことながら凄いし、僕も2年かけて動いて、セーヤさんとケイタさんは結果の見えない賭けにのってきてくた。このオオカミウオという未知への挑戦は、僕らにとっては小さな「冒険」だったわけです。

「こいつ、親分だな」・・・ケイタさんの一言で、オオカミウオのコードネームは「北海の親分」に決まった。



オオカミウオ後日談・・・

 僕としては、ホント、最初の一匹で終わり。それ以上釣る必要はないと思ってます。でも、2012年の初挑戦以降、周りの「オオカミウオ釣りたい!」という友人・先輩方に同行する形で、何度も再会することに。


その中で判明したのが、オオカミウオを狙って釣りやすい8月、彼らは産卵直前の状態であるということ。2015年の8月末、平坂さんがキープした個体を捌くと、お腹には成熟した卵がぎっしり詰まっていた。


また、前で一匹釣れると、かなりの高確率で後ろの人にヒットすることから、産卵に向けてペアで行動しているっぽい。船長いわく、産卵は9~10月、水深10m以下の浅場で行われるという。


つまり、オオカミウオの場合、狙って釣れる時期=産卵直前、ペアリング時期の可能性が高い。生物としての情報が少なすぎて、根拠は上に書いた程度の、釣り人目線での話でしかないけど、ここ近年のオオカミウオブーム(?)を見ていると、心がざわざわするわけです。

小塚さんも書いてたけど、自分なりのストーリーがあって、釣って、最初の一匹は食べてみる・・・っていうのは、もちろんアリだと思う。でも、最近のオオカミウオへの群がり方を見てると、どうもそんな風には思えないんだよなぁ。

雷魚や一部のトラウトの世界にあるような、過剰なノーキル、レスダメージ思想も理解できないけど、今後オオカミウオに挑戦しようという人がいたら、ちょっとだけその辺の意識を持って、挑んでもらえたらなぁと思います。


僕らの写真が勝手に使われてたり、バラエティーで「北海の親分」が連呼されてたり、SNSで頭を落とされたオオカミウオの写真が流れてきたりすると、悲しい気持ちになる。ほんと、オオカミウオは個人的な思い入れが強すぎて、メンヘラっぽくなっちゃうんだよな。笑

2017年8月22日火曜日

カミツキガメ捕獲作戦 in アメリカ

 ヘラチョウザメを釣った翌日、本流に注ぎ込む小川を散策していると、そいつは現れた。水辺を歩きながら、「ここ、カミツキガメいそうっすね~」なんて話していた直後、「カミツキいたーー!!!」と平坂さんが叫んだ。僕には水中へ潜っていく大きな黒い影しか見えなかったけど、それはアカミミガメのような「フツーのカメ」のサイズ感ではなかった。

 話はそれるけど、僕は水棲のカメが好きだ。中でも、ワニガメ、カミツキガメ、マタマタ。他にもハラガケガメ、オオアタマガメ、ヘビクビガメ、ニオイガメ、ドロガメ、ヨコクビガメ・・・といった、異形チックなやつらが大好き。好みの淡水魚(いわゆる怪魚)に通ずるところもある。・・・と、まぁ、そんな僕の性癖はともかく、目の前に憧れのカミツキガメが現れたわけである。捕獲しない手はないだろう。その場で適当な仕掛けを組み、魚の切り身を餌にして、ワナを仕掛けてみることにした。

ホワイトバスの切り身を餌にして、ワナを仕掛けてみる

 その日の夜。仕掛けを回収しにいってみると、餌をとられている仕掛けが多数。中には餌がとられた状態で、仕掛けが陸上に転がっていたり。アカミミガメやチズガメ、リバークーターなど多くのカメが生息していると思われるこのフィールド、カミツキ以外のカメが仕掛けにちょっかいをかけてきているようだ。何度か餌を変えて仕掛けを入れなおしたが、捕れたのはぱっと見アカミミのようでちょっと違うカメさんが一匹と、ブルヘッドキャットの一種と思われるナマズさんのみ。

色んなところの模様が消失気味なカメさん

かわいいナマズも釣れた

カミツキガメは掛かっておらず、翌日から別のターゲットを求めて再び大移動を開始。ここは一旦諦めざるを得なかった。


 次のターゲットはアリゲーターガー。山崎さんと平坂さんの帰国日が迫りつつあり、ガイドを付けて釣りをすることになった。「ガイドだし、余裕っしょ」と軽い気持ちで挑んでみると、これが本当に大苦戦・・・(とにかく、ガイドの腕が最低だった・・・笑)。迷走に迷走を重ね、「誰かが2メーターオーバー捕るでしょ!」と想定していた2日間のガイド釣行では、丸ボウズをくらった・・・。

小さなガーを掛けた平坂さんだったけど、川底の倒木に巻かれた・・・。リアルアリゲーターが生息する川に躊躇せずダイブ。それぐらい、精神的に追い込まれてた。

 山崎さんよりも一日早く帰国しなければならない平坂さんはここでタイムアップ。残念ながらアリガーは次回に持ち越しとなった。そして山崎さんのアメリカ最終日、自力開拓でアリゲーターガーを狙おうとしていると、「金は要らないから、俺のホームリバーに案内するぜ」とガイドが提案してくれた。・・・現実的に考えて、手漕ぎのゴムボートで自力開拓を1日だけしたところで、おそらく魚には到達することはできないだろう(大金だけ払って、何も得るものがなかった2日間のガイド釣行に意味を持たせるためだけに、最後は全力で玉砕して終わりにしようと思ってた)。彼のガイドとしての腕前をこの2日間で見せつけられていたため、かなり躊躇したけど、この提案に懸けてみることにした。

 いざ川へ繰り出し仕掛けを投入すると、なんと、すぐにウキが泳ぎだした。山崎さん、ついに念願のアリゲーターガーをキャッチ!

普通、ガイドつけてここまで迷走することはないでしょう笑。でも、これで良かった!

あまりにヘッポコすぎて、あの温厚な平坂さんをキレかけさせた、迷ガイド・ネイルおじさん。ホームに来た途端、サクッと2本釣らせてくれて、帰り際には自宅(自分で建てたのか、明らかに構造がヤバい笑)のシャワーも貸してくれた。また会いたいな。

そして僕らのアメリカ釣り旅は終焉を迎え、山崎さんも帰国の途についた。一人になって、まずやるべきことは、もう決まっている・・・。

「戻ろう、カミツキガメを捕りに」(空港からの道のり、600キロ・・・)

 カミツキ捕獲作戦は、シンプルに「数打ちゃ当たる戦法」・・・手持ちの仕掛けを可能な限り組み合わせ、一本一本に餌を付け、投入。頻繁に仕掛けを回収しては餌を替え、投入しなおし・・・を釣れるまで繰り返す。かっこよく言えば、「攻撃的な置き針」だ(笑)。カミツキガメポイントへの道中、水辺があったら寄り道し、餌となる小魚を捕獲していった。

目が赤く、ちょっと南米のオスカーっぽいブルーギル

素晴らしく美しいブルーギル。いわゆる「サンパーチ」

クラッピー、の小さいやつ

多分、ホワイトバス!ストライパーと混在していた

こっちがストライパー。ホワイトバスよりだいぶスマートな体形

バスの50アップ。ストライパー狙いの高速巻きミノーに食ってきた

 一日かけて餌を十分に調達し、カミツキガメのポイントまで戻ってきた。車から降り、水面に目をやると・・・「アレ!??」沖の方をスイスイと泳ぐ巨大なカメ・・・「カミツキいたー!!!」

以前見かけたものと同じ個体?カミツキってこんなに泳ぎ回るカメなの・・・?

見失わないように目で追っていくと、どんどん岸に寄ってきた。大急ぎでタックルを組み、カミツキガメの進行方向に向かって魚の切り身をキャスト。しばらく待ったが反応はなく、姿を見失ってしまった・・・。

 想定外の、いきなりのカミツキ出現に動揺しつつ、仕掛け作りに取り掛かった。日本で帰化したカミツキガメを何度も釣っている平坂さん曰く、「そんなに力は強くない」とのことで、スナップやスプリットリングを使い、かなり適当にワイヤーとフックを組み合わせていった。

ワイヤーにそこそこの大きさのシングルフックを装着。

手持ちの針やワイヤーをできる限り組み合わせていった結果、25本ほどの仕掛けが完成した。それらに餌を付けては投入、仕掛けの糸をそこらへんの木に結び付けていく。

カミツキは写真左奥に泳いでいき、水中へ消えた。その辺りにまとめて仕掛けを投入する。

水面の黒いやつ、全部ガー(スポッテッドとロングノーズ)。仕掛けにもガーがちょっかいかけてくることが予想された。

 仕掛けを全て入れ終わり、1時間ほど待機した後、早速一回目の回収に取り掛かる。「餌は、鮮度が良いものの方が食いが良いはず」・・・ということで餌が残っていても新たに付け直していくが、ガーや他のカメにいたずらされているのだろう、餌をとられている仕掛けが多い。

 餌の付け替えに時間がかかりつつ、最後の5本。ふと見ると、ピーンと糸が張った仕掛けがある。「・・・なんか掛かってる!!」無我夢中で糸を手繰ると、若干重い感触が。なんの抵抗もなくスルスルーと寄って来て、ドン、と着岸・・・「うわ、マジで釣れちゃった・・・!!!」

「フーフー、シューシュー」と激おこなカミツキガメ

なんと、一回目の仕掛け回収で、掛かっていた最初の獲物がカミツキガメだったのだ。ボガグリップで下アゴをつかんで確保し、陸にずり揚げる。こいつ、カミツキにしては相当デカくないか・・・?

この時が、自身、カミツキファーストコンタクト。一般的なサイズがどんなものか想像がつかなくて、かなり大きな印象を受けた。

無事にロングノーズペンチで針を外せて一安心。しかし、困ったのが写真撮影。こいつを捕った場所が、足場が不安定な急斜面。そこから開けた場所まで行くには、斜面を越え、藪を漕いでいかなけらばならない。気合でカミツキを持ったままトライはしてみたが、重すぎて無理だった・・・諦めて、この場でできる限りたくさん写真を撮らせてもらうことにした。

御尊顔。いいカメだ・・・。甲羅には同居人のヒルが。ボガグリップをはめてしまえば、カミツキ攻撃の心配もなく、まじまじと観察できた。

この前足で踏ん張る感じ、カッコイイ。

肉々しい前足

尻尾と後ろ足。遠近感もあるけど、爪のデカさがすごい!

お腹側。この肉感が堪らない。実際可食部も多くて食べても美味いらしい。そのうち、日本で。

撮影に付き合ってくれて、ありがとう、カミツキガメくん

 個体を目視して確認している以上、もちろん捕れるまでやるつもりだったけど、予想以上に早かった。日本でも一部の地域ではかなり繁殖しているカミツキガメ。帰化したやつを捕獲しにいってみようと考えていたこともあったけど、憧れのカメへのファーストコンタクトが、原産国での天然個体で本当に良かった!「世界三大怪亀」コンプリート達成へ向け、第一歩(笑)この日の夜は川辺にテントを張り、一人ビールで乾杯したのでした。

 翌朝、またしても同じカミツキ君に出会った(笑)バイバイ!

2017年8月19日土曜日

ヘラチョウザメを探す旅 in アメリカ

 
 2014年の6月、僕は北米旅の入り口、アメリカにいた。一番の目的は「ヘラチョウザメ」。次いで「アリゲーターガー」。他にも挙げ出したらキリがないくらい、魅力的な生き物たちがいる。

今回、「ちょうどアリガーのロケやってるから、手伝って!」と声がかかり、アメリカに入国した日の夜、テキサスにて小塚拓矢さんテレビクルーと合流。翌日からの釣りでは、針を使わない「縛り釣り」で、アリゲーターガーを捕獲!アメリカ旅はここから始まったのだった。

ロケ終了間際、小塚さんがデカそうなのをヒットさせるも、沈む倒木に糸を巻かれてラインブレイク・・・したが、その糸を僕がボラ針でひっかけた。連携プレーでキャッチ(笑)

餌に食いつかせてワイヤーの輪っかでクチバシを縛るのだが、やっぱりバレまくる。最後の最後にようやく縛って確保した!

ロングノーズガー!こちらも釣り針は使わず、化学繊維のロープをほぐして束ねた「モフモフ」に食いつかせて、歯に絡めてキャッチ。



 楽しかった2日間のロケ終了後、小塚さんたちに分かれを告げ、ヒューストンの空港へ車を走らせる。そこで今回10日間旅を共にする「山崎の兄貴」「珍生物ハンター平坂さん」と合流。いよいよこれからが本番、ヘラチョウザメを探す旅が始まった。まずは山崎さんがネットで抑えてくれていたとある川を目指し、800キロの大移動。夜通し自分と山崎さんで交代し運転し続け(平坂さんは国際免許持ってこなかった・・・!)、日が昇った頃、ようやく目的地に到着した。

最初の目的地に到着。皆、小さなワームの胴付き仕掛けでストライパーを狙っていた。

が、しかし。足場は整備され、釣り人もいっぱい。期待していたような雰囲気ではなかった。とりあえず釣り人に話を聞いてみると、「ヘラチョウザメ?うん、いるよ」とのこと!中にはボーガンを持っている人もいて、「ガーとかヘラチョウザメを撃つんだ」という。しかし、ほとんどの釣り人が小さなワームを投げており、小型のストライパーが数匹釣れているだけ。うーん、ここじゃない感がすごいする・・・。

川の近くにあった釣り具屋で情報取集するも、有力な情報は得られず。

バラ売りされているスナッギング(ヒッカケ釣り)フック。サイズバリエーションも豊富。

プランクトンしか食べないヘラチョウザメはスナッギングで釣る。専用の針が売っていたので購入した。パッケージ裏の「スプーンビルキング」のイラストがカッコイイ。

 近くのローカル釣り具屋で情報を得ようとするが、コレといった話は聞けず。スナッギング(ヒッカケ釣り)フックを購入し、フィッシングライセンスを取った後、もう一か所、山崎さんが目星をつけてくれていた川を目指して移動することにした。サクサクと軽快に移動しているように聞こえるかもしれないけど、だいたい一度の移動は確実に300キロ以上・・ヒューストンを出発してから未だ竿を振っていないけど、既に満身創痍気味だ。

 二つ目の目的地に到着。川幅は広く、流れも強い。いい感じ!

 二つ目の川についてみると、川幅は広く、流れも強くて太い。「ここは、ちょっと雰囲気ある感じですね・・・」しかし、この時点でもう一つ、気になっている川があった。「ここは夜に釣りしてみて、明るいうちに気になるポイントを全部見ておきましょう!」と、再び数百キロの移動を開始。ついに山崎さんも落ちて、平坂さんは相変わらず後部座席で荷物に挟まって眠っている中、スニッカーズとレッドブルを過剰摂取して運転し続けた。気合で三つめのポイントに到着するが、唖然。川がフェンスで囲まれていて、川辺まで降りられない。「・・・さっきのポイントに引き返しましょう・・・!」

 何度も意識が飛びかける中、なんとか二つ目の川に戻ってきたときには既に夕方だった。水面を観察しているとかなり速い流れの中、ロングノーズガーが次々に呼吸しに上がってきている!山崎さんと二人してガーを狙ってみるがカスリもしない。下流へ調査に行った平坂さんが気になり、合流してみると「ヘラチョウ、いました!」と!沖の瀬で、ヘラチョウザメが水面を割って出たのが見えたとのこと。「今夜は夜通しスナッギングっすね・・・。」

ドでかいストライパーが釣れていた。それを持たせてもらう僕たち。後ろの女の子の表情がウケる。

しかし、僕は頭痛と吐き気で具合が悪すぎて完全にダウンし、テントで死亡。山崎さんと平坂さんは夜の川に繰り出していった。・・・朝4時、テントに平坂さんが帰ってきた。「ストライパーとチャネルキャットのみでした・・・」とだけ呟いて、即、気絶された・・・朝、皆起き出してから話を聞くと、「脇を痛めるぐらいしゃくり続けたけどカスリもしなかった」とのこと。・・・というわけで、2日目もヘラチョウザメを探しての大移動が始まった。

今日も運転よろしくお願いします、山崎の兄貴。

 今日は、過去にヘラチョウザメを釣ったことがある小塚さんと半澤セーヤさんに貰った地図を頼りに水辺を目指してみることにした。しかし、地図のピンが打たれている場所に到着してみると、そこはただの湖のボートドッグだった・・・。さらに、「小塚さんがこう言ってました」「あれ?セーヤさんはああ言ってたけど・・・?」と完全に迷走しだした。

地図を頼って来てみたら、湖のボートドッグに着いた。ここはさすがに、ヘラチョウザメいないだろ・・・。

でも、嬉しい誤算。ミシシッピニオイガメがいたー!こーゆー系の水棲ガメが大好きなので、超テンション上がった。腹甲面積が小さいのが萌えポイント。

 ニオイガメを捕まえて癒された後、再び開拓開始。走り回っている最中、釣り具屋を発見した。情報を得ようと店に入ろうとすると、入り口にヘラチョウザメのステッカーが貼られている!

昨日買ったスナッギングフックのパッケージと同じデザインだ!

店内にはヘラチョウザメを持ち上げて微笑む釣り人たちの写真も飾られている!

確実にヘラチョウザメに近づいてきている。店員さんに話を聞こうとするも、「今はわかる人がいない」と。とりあえず地図で周辺の水辺をチェックして、近くの川まで行ってみることにした。

 川辺まで来てみると、どこか見たことのある風景。なんと、昨日3か所目に来たフェンスに囲まれたポイントの対岸側だった。こちら側は川に近づけるようで、釣りをしている夫婦がいたので話を聞いてみる。「ここにヘラチョウザメはいますか?」と聞いてみると、「スナッギングかい?」と返ってきた!詳しく聞くと、「春はこの川の下流が良い。近くに別の川もあるよ。」とのこと。下流側を見に行ってみるが川幅があまりに広く、ポイントが絞りづらい。もう一か所教えてもらったポイントに移動してみることにした。

 辿り着いたポイントは、流れが速くて太い。これまで見てきた川の中で、一番良さそうな雰囲気だ。ヒューストンを出てから風呂に入っていなかったので、まずは水浴びすることにした。山崎さんはライトタックルでスピナーをキャストし始めた。水浴びを終え、スナッギングタックルを組みに車に戻る。

久しぶりのお風呂。北米旅の間、ベネズエラで入院していた時に処方されていたマラリア治療薬の副作用で、頭を洗う度ありえないくらい髪が抜けまくり、だいぶ薄くなった・・・。

タックルを組んでから川に戻ってくると、山崎さんがホワイトバスを連発していた。

 ホワイトバスを連発する山崎さんの横でスナッギング開始。腰まで入水し、流心の太い流れに向かってドーンと針を遠投。完全に気を抜いていたその3投目。いきなり「ドスッ!」という衝撃が手元に伝わり、流れの中で前に倒されそうになる。なんとか持ちこたえるが、同時に「ギュギュギュギュギュー!!」とリールから一気に糸が引き出された。イキナリすぎる展開に、自分含め皆、「マジ!?」テンパる。糸の先にいるのは間違いなく魚で、もうアイツ以外考えられない。水面に灰色の尻尾が見えた瞬間、叫んだ。

「ヘラチョウだー!!!」

 ヘラチョウザメに出会うまでに要した時間は2日間。キャストはたったの3投。でも、走行距離は2000キロオーバー。短いんだろうけど、とんでもなく長かった。平坂さんがそいつの下アゴを掴んでくれた瞬間、震えた。やっぱり釣り旅って、最高だ・・・!!

ちょうど霧が出てきて、辺りは幻想的な雰囲気。そんな中現れてくれた怪魚、ヘラチョウザメ。この個体は鼻が折れたままくっついており、さらに不気味さを強調させる顔つきに。

「チャターベイト君」と命名した(笑)。僕の釣り人生で、「印象的だった一匹」かなり上位にランクイン。

 プランクトン食で、鰓の形状が独特。

完全なビルを持つヤツでも嬉しかっただろうけど、鼻が折れていたことでより一層この一匹への愛着が増しました。

 写真撮影を終えて、リリース。ゆっくり流れに帰っていったそいつを見届けて、僕のヘラチョウザメの旅は完結した。さぁ、あとは山崎さんと平坂さんが釣るのみ!僕はライトタックルに持ち替え、ホワイトバスを釣りながら二人を見守る。


 僕のチャターベイト君以降、怒涛の展開だった。すぐに山崎さんに掛かるも、テイルウォーク(!)されて、バラシ。直後、180度スイングでしゃくりまくっていた平坂さんが掛けた!「がんばれ、ヒロシー!」と山崎さんとふたり、応援する。ドラグを出さずに一気に寄せて、山崎さんが尻尾を掴んでキャッチ!

ヘラチョウザメを抱き上げると、腕の中でビチビチ暴れて、身体に抱きついて(?)くる。「あぁ、グリップされた!グリップされた!」とはしゃぐ平坂さん。

そして日没間際、これまでサポートに徹してくれていた山崎さんが美しい完全個体を獲り、僕たちのヘラチョウ物語は畳みかけるようにして、幕を閉じたのでした。


最後に山崎さん。欠損の全くない、完全美個体だった。「魚釣って、久しぶりに痺れたわ・・・」

なぜか最後にロングノーズガーもキャッチした平坂さん。ガノイン鱗ぶち抜くのは流石・・・。

 この日の夜はモーテルに泊まって、3人でビールを開けてお祝いした。この後もいろんな魚や生き物を求めてアメリカをひたすら走り回る日々を送り(アリゲーターガーをガイドをつけて狙ったらボウズくらったり、平坂さんがアルマジロをすんでのところで取り逃がしたり、ヒアリの巣を踏んで全身腫れ上がったり・・・)、僕らのアメリカ旅は完結しました。

アメリカ、空がとにかく青かったなぁ。

北米旅から帰国してからは、再び山崎さん、平坂さんと高知アカメ旅。


その翌年は北海道でイトウキャンプしたり。


兄貴諸氏、色んな旅を共にして、喜びを共有して、とにかく本当にお世話になりました。最近はなかなか皆が揃うことはなくなったけど、またいつの日か、どこかのフィールドで、心震える旅をしたいですね。ヘラチョウザメ、本当に心から、最高の旅でした!

アメリカ旅・カミツキガメ編へ続く