2019年5月11日土曜日

ケニアのナイルスッポン

 「巨大なナイルパーチが釣りたければ、●●へ行け!!」・・・ナイルパーチ一時遠征を終えて一旦町に帰ってくると、皆が口を揃えてそう言った。「そこにいけば2、3日もあれば4、50kg、間違いない、You will catch」と、僕の目をまっすぐ見て断言する「漁師」の協力者も現れ、満を持してナイルパーチ二次遠征へ繰り出した。


「ここがその場所だ!」出船してから半日以上走り続け、連れてこられたのは水辺に水生植物が茂る泥底の湿地帯・・・それでも、「ローカルだけが知るナニカがあるのかも」と、スーパーシャッドラップをトローリングしてみたけど、泥底を引っ掻き回すだけで、何の反応もなし。


「またこのパターンですか・・・」結局、「漁師」のおっさんはただの「無能おじさん」で、ナイルパーチの付き場なんて全く把握しておらず、さらには「だってここに来るのは初めてだし」と白状した。はい、僕の判断力不足でした・・・。


無能おじさんに指示を出してトローリングし、キャンプ地周辺での自力開拓を始めたけど、半日の釣りで持ち込んだ全ガソリンの9割が尽きた。トローリングの概念を何度も説明した上で、「日数分、必要量のガソリンを用意してくれ」と現地人たちに調達してもらっていたけど、これも大失敗・・・。結局、トローリングで釣れたのは2キロぐらいの、ブラックバスサイズの子パーチが2匹のみ。泣


さらに、釣り場が国立公園に隣接しているということで、レンジャー達に滞在日数分のエントリーフィーを結構な額、前払っていた。他にも色々かかったお金があって、後で揉めるのがダルイので全て前払いしていて、見切って早上がりしようにもそれらが返ってくるはずもなく、絶望感しかない。泣きたいわ・・・

 そんな中、暇つぶしと食料調達を兼ねて毎日ナイルパーチ狙いの延縄を仕掛けているレンジャーの爺さん2人に出会った。湿地の中の岬から風に乗せて延縄を沖へ流して、出会った初日にメーターちょいぐらいのナイルパーチを捕ってみせてくれた(ナイルパーチを持ち上げているのは、無能おじ。)


爺さんたちに弟子入りして、延縄を流し続ける毎日。テラピアは爺さんたちから巨大な網を借りて、湿地に立ち込んで巻き網漁で捕獲していった。網がボロボロすぎて効率はあまり良いとは言えないけど、延縄に必要なテラピアは、少なくとも50匹以上。それを毎日、僕ひとりで、釣りで捕獲していくと、さらに効率が悪い・・・頑張るしかない。


なかなか餌が集まらず、隊員たちと何度も巻き網漁を繰り返す。「もう疲れたから、今あるテラピアを刻んで針にかけよう」と無能おじが言いだし、さらには「もうやめよう。なぜなら、俺はすごく疲れている」と言われて、ブチ切れた。「てめぇ、いい加減にしろよ!!!!」。ヤケクソで一人で立ち込んで巻き網を引きずっていると「もっと沖へ行け!」と岸から体育座りで指示を出してくる無能おじ。「殺すぞ!!!」と沖から叫ぶ僕(笑)


今思い出すと笑えるけど、辛かったな(笑)。ワニに怯えながら巻き網を頑張ったかいあって、淡水フグとも出会えたし、小型のタイガーフィッシュなんかも捕れたりした。スピナーでも巻いたらなにか釣れたかもしれないけど、延縄を維持することに必死で楽しめず。



おじい達の延縄50本針を全て研ぎなおして、自分たちで新たに50本ほどの仕掛けを作り、約100本体制で数日間挑んだ。が、やっぱりこの湿地はナイルパーチが好むポイントという感じはなくて、小さなヤツが2日に1、2匹掛かってくる程度・・・


そんなダメダメな日々を過ごしたケニアでのナイルパーチ狙いでの、ハイライト的出来事。船で沖に出て仕掛けた延縄に、巨大なスッポンが掛かった!生命感あるロープを手繰り寄せ、いきなり濁った水中からボゴッと水面に現れた時、絶叫した。「早く糸を切れ!!!」と叫ぶ無能おじを無視して(笑)、ボガグリップで引っこ抜いた。


甲羅だけで60cmはありそうだ。後で調べてみるとナイルスッポン、Trionyx triunguisっぽい。生きたテラピアを餌にした、沖の表層の延縄に掛かってくるなんて全く想定していなかったし、本当に嬉しい獲物だった。


 ・・・という感じで、ナイルパーチ二次遠征も心折られそうだったけど、スッポンに救われた。でも、巨大なナイルパーチ、捕りたかったなぁ・・・。この地では獲り尽くしがドンドン進んでいるようで、毎日ナイルパーチが現地漁師たちによって刺し網で捕られ、町の集積所で氷漬けにされストックされていた。相当数のナイルパーチを見たけど、その中での最大は120cmくらいか。この湖のナイルパーチの将来は、悲しいけど暗い。次回の挑戦はケニアではなく、別の国でやってみようと思います。