2018年3月16日金曜日

ムベンガ再戦 その1

【2018.2.3】マイピリ滞在2日目 ムベンガアタリ2

 北海道の自宅を出てから絶え間なく移動が続き、最終目的地のマイピリ村にたどり着いた時にはもう疲労困憊。飯も睡眠もロクに取れていなくて、トマトパスタを掻き込んでテントで寝ようしたけど、蒸し暑過ぎて眠れない。寝汗でベトベトになりながら、日付が変わるころまでは酔っぱらった村人に、深夜はヤギに、未明はニワトリに、早朝は起き出した子供たちに睡眠を妨害されて、グロッキー状態で2月3日の朝日を拝んだ。今日から釣りだ。


今日は曇り空で風が強い。昨日の夜にムベンガの餌調達をお願いしてあった漁師はいつまでたっても帰ってこなくて、結局餌が揃ったのは11時過ぎ。今日はザンダ(学名Mormyrops anguilloides、大型モルミルスの一種)が3匹のみで、期待していたムスワロ(ギギみたいなナマズ)は捕れなかったらしい。これだけを持って釣りに出た。


最初に入ったのは「アツシ・ポイント」。初回のコンゴ旅を共にした古田アツシ君がムベンガをバラして泣いたポイント。二回目の旅では僕も多くのアタリをここでもらっていて、推定30キロクラスをジャンプ一発でバラしている。スピニングタックルは40mほど糸を流し、ベイトタックルは出してせいぜい15m、それぞれ沖と手前の流れにウキを留め、アタリを待った。


仕掛けを投入してから15分も経っていないだろうか、突然「バン!」と音がして、メイン糸のPEラインと船の取っ手とを縛り付けてあった輪ゴムがはじけ飛んだ。「バラララララ!!!」と物凄い勢いで、スピニングリールのスプールから糸が引き出されていく。「キタキタキターー!!!」と叫びながら竿を手に取り、糸をフリーのまま送っていくと、「ドッパーン」と沖でムベンガが全身を出してジャンプ。咄嗟にベイルアームを返すと、結構な重量感が一気に全身に乗って来た!


すぐに魚がこちら側に突っ込んできて、ボートべりで全身を出して何度もジャンプ。目の前で暴れ狂うムベンガ。この魚の水面での暴れっぷりは、「異常」の一言に尽きる。



バンバもアモコも釣りの知識はなく、大きな魚の扱いには全く慣れていない。アモコが担架式ランディングネットを構えているけど、網の先っちょを川に沈めているだけで、そこにムベンガが突っ込んできて、口周りに掛かっているトレブルフックがネットに絡まり、絶対絶命・・・。


釣り人の決まり文句だけど(笑)、ファイト中の記憶がぶっ飛んでいて、あんまり覚えていない。バンバが撮影していた動画を確認すると、フックがネットに絡まった直後、アモコがムベンガの尻尾を掴んで網に押し込み、二人で担架を閉じて、絡まっているトレブルフックなんか気にも留めずネットを鷲づかみにして、必死に船に引きずり上げていた。3人とも絶叫。僕は涙を流して、泣き叫んでいた。


 ムベンガを追いかけて2年。とにかく、「長かったなぁ・・・」と、強く思った。自分語りは苦手で、他人に自分の苦労話をするのは好きじゃないけど、ムベンガは、この旅だけは、ちょっとだけならいいかな。正直に息ができる瞬間だった。ありがとう、ムベンガ!!


バンバ君も、ありがとう。彼に出会えていなかったら、ここまでくることは難しかったかもしれない。「俺とムベンガの写真をとってくれ!!」・・・バンバとアモコのウザいはしゃぎっぷりも(まぁ、世界からみたら日本が特殊なんだろうけど。もうちょっと余韻に浸らせてほしかった)、気持ちよく許容してあげた。


この旅はメジャーを持ってきていなかった。手で測ると、手のひら6個分。だいたい115cm、15キロオーバーってとこだろうと思う。まだまだ終われねえ(笑)それが嬉しい!


タックルデータ(ホント、色んな人に協力してもらっているので、ちょっとでも恩返しになったらいいなーと思うので書く!

ロッド:ブランクがDear Monster MX-8+、グリップが困難BOYZ浅野君のハンドメイドスピニンググリップ
リール:ステラSW 8000PG
ライン:アバニキャスティングPE Si-X8号
ショックリーダー:バリバスショックリーダーナイロン170lbを一ヒロほど
仕掛け:自作ウキ+ワイヤーリーダーとして大洋ワイロン#30を90cmほど+トレブル4本ワイヤー仕掛け


 ファイト中、船の中でガソリンタンクが倒れ、爆発。多くのガソリンを失い、船中はガソリンまみれになった。騒動が収まって僕らも落ち着きを取り戻してから船を洗い、再びアツシポイントに帰って来た。残り一匹になったザンダ(ベイトタックルで投入していたザンダはてんやわんやしているうちに死んでしまった)を針に掛け、スピニングタックルで沖に流した。船を固定している岩の上でアモコがムベンガを捌いている。オールと手で鱗をベリベリ剥がして、レザーマン一本で3等分のぶつ切りに(この旅の間ずっと、僕のレザーマンがアモコ、バンバ、村人の間で使いまわされて完全に死んだ。バンバ君が「村人が石を使ってアレンジしてくれるから大丈夫さ」と言ってきて、キレそうになった・・・)。


ムベンガの肉を川で洗うと、その匂いにつられて小魚達が発狂している。袖針にムベンガの肉片をつけて手釣りをすると、次々と小魚が釣れてくる。バンバも大喜び。




 完全に気を抜いていたら(また来るなんて一ミリも考えられなかった)、「バン!」「バララララー!!!」・・・バンバが「ケンゴー、ベンガベンガベンガ!!!」と叫んでいる。咄嗟に竿を手に取ると、再び沖で全身を見せてムベンガが大ジャンプ。ベイルアームを返した直後、全身に重みがのしかかってドラグが鳴く。でも、すぐに外れてしまった。さっき釣れたやつよりちょっと小さいくらいだった。


この旅、マイピリ村滞在は23日間の日程を確保している。今日はまだ一日目、5時間くらいしか竿を出せていないけど、幸先が良すぎる。コンゴのウェルカムフィッシュってやつかな。よくここまでしつこく戻ってきたな(笑)って。ザンダを使い切ってしまったところで、大きな満足感を胸に、心地良い風に吹かれながら村に帰った。村の大人も子供たちも、ムベンガを見て大はしゃぎ。


村に帰ってきて、すぐにアモコがムベンガの肉をこぶし大に切り分けていく。カマの部分や、ちょこっと肉を切り分けて、これらは「ケンゴが燻製にして、今日食べる分」と言って、僕にくれた。少なくね?(右上の鍋が、僕への配給)


そしてすぐに燻製づくりに取り掛かり始めた。火をおこし、その上にくり抜いたドラム缶を置く。網にムベンガの肉を乗せて、バナナの葉っぱを被せる。冷蔵庫なんてもちろんないから(というか電気がない)、アモコ達は3日ほどいぶし続けて炭みたいにして、茹でてほぐして食べる・・・僕は釣ったその日の内に、最高のスモーク状態のをがっついて食べる。


晩御飯は、ムベンガの燻製をほぐして、特製トマトソースに投入した、トマトムベンガパスタ。あとは、最高状態のムベンガの燻製を腹いっぱい食べた。食べるのに夢中になりすぎてて、写真撮ってなかった!


 2年間思い続けた気持ちが全て報われた一日だった。「これまでいろいろあったけど、全部これで良かったんだな、と思わせてくれる一匹が怪魚なんだと思います」・・・親友が創った言葉だけど、ほんとその通り。心から、旅を続けてきてよかったよ。


・・・この数日後に知ったんだけど、この日アモコは、「このムベンガは俺のものだ」と、村人たちには肉片ヒトカケラも分け与えなかった。小さな小さなこの村の、超閉鎖的コミュニティーに入り込んでいかなければ、と僕は旅の間常に考えて行動していたけど、アモコのアホすぎるアフリカクオリティーに何回もブチ切れそうになった(一回、フライパンを投げつけようとして、すんでのところで自分を抑え込んだ笑)。バンバは「アモコは、2年前とは全然違う人間になってしまった」と言っていた。彼にとって僕は優しすぎたようだけど、どこまで線引きして気持ちをぶつけていくか、長期コンゴ旅の難しいところだと思った・・・。

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